2016年4月10日日曜日

ボクの好きなあの唄は いつも君に聴こえていない


ビールを2杯 スクリュードライバーを1杯

ボクをヘベレケにするには 充分なほどの お酒を呑んだ夜

充分なほど上機嫌になって 帰路を歩む


イヤーフォンを持ち合わせておらず 耳元で迷惑にならないボリュームで

アイフォーンのステレオから ポラリスの「光と影」を鳴らした

それだけでは飽き、足らず 
そのアイフォーンを左の耳元で 扇ぐように揺らし
自分だけに聴こえるよう リバーブ効果を加える

その曲のまた心地よさを知る  

そしていつかのタイコクラブで
其バンドが まるで青空を薄赤い色を変える魔法をかけるように

「季節」という曲演奏していたことを なんとなく思い出していた

しかしボクのアイフォーンは 魔法の杖でもなく 
どんな振っても あの深い藍色の空は 晴れ渡ることもなかった

むしろ 自らも意トしない操作で その曲を停止させてしまった

それでも懲りずに ボクはアイフォーンを振りながら帰った


その姿を不審に思った警察官に 捕まらなくてよかったと 今更思う


いつもより遅い就寝から いつもより早い起床をし
『リップヴァンウィンクルの花嫁』という映画を観てきた

岩井俊二監督が描く その世界と描写は
ときよりドキュメンタリーでも見ていると錯覚するほど 生々しく
その錯覚とその物語との距離感覚が混乱するほどに
その非日常的な世界が 美しく描かれていた

そして 真白から吐き出させる 真白の優しい言葉に
ただただ 涙が溢れてきた  最近 体重がまた増えたせいか 涙もろくなった


いつか”リリィ・シュシュのすべて”
を観たときの自分を なんとなく思い出していた

あの鉄塔とカイトのシーンが その悲しみと反比例するほどに美しかったこと
最後の描写に 共感を抱いてしまったこと

それから昔 映画監督になることを夢見たことを 思い出していた

今となっては 映画監督どころか ただの小太りで
映像を撮るとなっても 鉄板の上で踊る肉を撮るぐらいなもんだ

夢を諦めたわけでもなく かといって必死に実現しようとしたわけでもなく


ああ なんていい加減な生き方をしているだ 

と ほどよく自己嫌悪になったところで ボクはあの歌を口ずさむのだ